携帯電話の本人確認、マイナンバーカード一本化へ 岸田政権の思惑とは?

6月18日、政府は携帯電話や電話転送サービスを「対面」で契約する際、事業者に対し、マイナンバーカードなどに搭載されているICチップの読み取りを本人確認方法として義務付けることを決定しました。

このニュースを受けて、「マイナンバーカード無いと携帯契約できないじゃん!」と嘆く声があちこちから聞こえていますが、本当にそうなのでしょうか?

目次

結論 何がどうなったの?

対面の場合

変更前

・運転免許証やマイナンバーカードなどの提出(基本的には原本を持参し、コピーを取られることが多い)

変更後

マイナンバーカード等に搭載されたICチップの読み取りが義務化

運転免許証等のICチップでも可

非対面(オンライン)の場合

変更前

運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を撮影し、その画像を送信

変更後

マイナンバーカードによる公的個人認証に原則として一本化

・運転免許証の画像の送信する方法は廃止

・保険証など顔写真のない本人確認書類は廃止

まとめると、

対面においては、マイナンバーカードや運転免許証のようなICチップの内蔵されたものの読み取りが義務化

非対面においては、運転免許証等の画像の送信ではなく、マイナンバーカードによる公的個人認証が必須

ということです。

決して、マイナンバーカードがないと契約できないというわけではありません。ただし、非対面(オンライン)による契約においては、マイナンバーカードが必要になるため、不便さは出てくるかもしれません。

マイナンバーカードとは?

マイナンバーカードの概要

そもそもマイナンバーカードとは、平成27年の10月以降政府より通知された、国民一人一人に決められた12桁の番号のことです。

デジタル庁は、マイナンバーカードの説明として以下のように説明しています。

マイナンバーは、社会保障制度、税制、災害対策など、法令又は条例で定められた事務手続において使用されます。マイナンバーによって個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能になります。

引用:マイナンバー制度とは

マイナンバーカードの交付状況について

令和6年4月末時点での総務省の発表によると、全国でマイナンバーカードの保有枚数率は73.7%まで増加しました。その一方、保有者のうち、カードを持ち歩いている人の割合は46.7%(令和6年2月デジタル庁の調査)です。

運転免許証を持ち歩く人の割合が約80%と比較すると、国民に十分に根付いていないことがわかります。

公的個人認証サービスとは?

「公的個人認証サービス」とは、オンラインで(=インターネットを通じて)申請や届出といった行政手続などやインターネットサイトにログインを行う際に、他人による「なりすまし」やデータの改ざんを防ぐために用いられる本人確認の手段です。 

インターネットサイトやコンビニ等のキオスク端末等にログインする際に、ログインした者が利用者本人であることを証明することができます。

携帯契約の本人確認とは?

携帯電話の契約には本人確認が不可欠ですが、そもそもこれまではどのような書類が必要だったのでしょうか。

シェア率No.1のドコモの場合は以下の通りです。

  1. 運転免許証(都道府県公安委員会発行のもの。国際運転免許証除く)
  2. マイナンバーカード(個人番号カード)
    • マイナンバーを取得・保存することは一切ございません。
  3. 身体障がい者手帳
  4. 精神障がい者保健福祉手帳(障がい者手帳)
  5. 療育手帳

のいずれか1点

上記をお持ちでない場合

  1. 住民基本台帳カード(顔写真があるもの)
  2. 在留カード+外国発行パスポート ※(または)外国人登録証明書
    ※在留資格が「永住者」の場合は、外国発行パスポートは不要です。

のいずれか1点と、補助書類をお持ちください。

次に該当する場合、下表の補助書類は不要です。

  • クレジットカードでお支払いの手続きをされる場合
  • キャッシュカードでお支払いの手続きをされる場合

※ここでいう補助書類とは、電気・ガス・水道などの公共料金領収証や、住民票などのことです。

引用:本人確認書類 (個人[成人])かつ対面の場合

ちなみに、「健康保険証」は、ドコモの場合2023年5月24日以降本人確認書類としては受付不可となっています。

今回の策定の理由

では、政府はなぜこのような変更をしたのでしょうか。

6月18日にデジタル庁より出された、「国民を詐欺から守るための総合対策」の中でこのように説明されています。

ア 本人確認の実効性の確保に向けた取組
携帯電話や電話転送サービスの契約時の本人確認において、本人確認書類の券面の偽変造による不正契約が相次いでいることから、犯罪収益移転防止法14、携帯電話不正利用防止法15に基づく非対面の本人確認手
法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。
対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを犯罪収益移転防止法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認において義務付ける。また、そのために必要なICチップ読み取りアプリ等の開発を検
討する。さらに、公的個人認証による本人確認を進める。

「国民を詐欺から守るための総合対策」

今回発表された「国民を詐欺から守るための総合対策(概要版)」でも以下のような資料が示されており、近年SNSやキャッシュレス決済などを利用した特殊詐欺が増加していることがわかります。

警察庁によると、今年1月から4月までの間、全国のSNSを使った投資詐欺の認知件数は2508件、被害額はおよそ334億3000万円に上っています。

つまり今回の策定の理由は、運転免許証などの本人確認書類の券面偽造による携帯電話の不正契約が相次いでいることから、特殊詐欺などの犯罪を減らしたいという思いなのでしょう。

今回の策定を受けての世間の反応

今回の件について、人々がどのような反応をしているのか見ていきましょう

肯定的な意見

・大賛成!むしろ、今までの券面確認のやり方自体がおかしい!
・現場任せだと適当にするから、義務化はいいと思う
・ようやく政府は、目視じゃなくて情報を読み取る重要性に気付いたのか

否定的な意見

・マイナンバーカードの普及率を上げるためになりふり構わず政府が仕掛けてきた
・マイナンバーカードの取得が任意なのに、義務化はおかしい
・ICチップの読み取りを義務化する前に、ICチップの強度を上げてくれ…

まとめ

携帯契約における本人確認は、利用者の安全を守り、社会全体のセキュリティを確保するために欠かせないプロセスです。従来の券面確認からマイナンバーカード等ICを用いた手法への移行は、技術の進化とともに自然な流れなのかもしれません。

しかし、先にも見た通り、マイナンバーカードの普及率はお世辞にも高いということはできず、さらに、マイナンバーカードをもっていない人にとっては今回の措置は、政府によるマイナンバーカードの使用の強制だ!と、すでに大きな不満が上がっているのも事実です。

いまだ多くの懸念点が残るなかでの今回の措置。今後の政府の動向にしっかり注意しましょう。


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