皆さんこんにちは。昨今教員の不祥事のニュースがよく話題になりますが、その中で、「懲戒」や「停職」のような言葉を聞いたことはありませんか?今回は、そんな教員の処分について解説していきたいと思います。
教員の処分って具体的にはどんなものなの?
例えば以下のようなニュースです。
体罰を訴えた保護者アンケートをシュレッダーで破棄し、回答を偽造したとして、岩手県教育委員会は17日、盛岡教育事務所管内の小学校に勤める男性教諭(58)を同日付で停職6カ月の懲戒処分にしたと発表した。
県教委によると、この教諭は昨年10月、担任を務める児童の保護者から回収した「いじめアンケート」に、自身の体罰が記されていたことに動揺し、発覚を恐れてシュレッダーで破棄した上に、保護者を装って白紙のアンケート用紙に「いじめを見聞きしたことはない」と記入して提出したという。改めて保護者が学校に抗議し発覚した。
他にも、複数の児童に「あほちんだな」「うそをつくと逮捕される」などの不適切な発言を繰り返していた。この男性教諭は2021年度にも、体罰などで減給1カ月の懲戒処分を受け、1年間の事後研修を受けていた。
朝日新聞
この男性教諭は、保護者アンケートで自分の体罰が発覚することを恐れ、そのアンケートをシュレッターで破棄し、回答を偽装したとのことです。
この場合では、「停職6か月」という「懲戒処分」がこの男性教諭に下されています。
そもそも教員の処分の根拠はどこにあるの?
では、このような処分が下される場合に、その処分の根拠はどこにあるのでしょうか?
結論からいうと、それは「地方公務員法」という法律になります。教員は、どの都道府県に所属していようとこの地方公務員法の効力を受けることになります。
どんな行為をしたら処分をうけるの?
地方公務員の場合は地方公務員法第29条1項で、懲戒処分の対象となる行為が定められています。
懲戒処分の対象となる行為(懲戒処分事由)には3つの種類があります。
どのような行為が、どの懲戒処分事由に該当するかが明確に区別されているわけではなく、1つの行為で、複数の懲戒処分事由に該当することもあります。
(1)法律、命令、条例、規則、規程等に違反した場合
教員は、地方公務員法、条例、規則、規程等で、公務員が職務上守るべきルールが定められています。
教員はこれらを遵守して職務にあたる義務があります。これらの法律で定められている公務員のルールに違反した場合は、懲戒処分の対象になります。
法律で定められている公務員の義務には以下のようなものがあります。
秘密を守る義務
第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を受けなければならない。
3 前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。
地方公務員法
(2)全体の奉仕者にふさわしくない非行があった場合
全体の奉仕者である公務員であるにふさわしくない、違法行為や反社会的な行為も懲戒処分の対象となります。
そのため、公務外で行われた暴行・傷害、飲酒運転、痴漢行為等の犯罪行為、刑事罰の対象にならなくても社会的に非難されるべき行為も懲戒処分の対象になります。
信用失墜行為の禁止
教員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはいけません。これは、生徒や保護者の個人情報などを保護するために重要です。
第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
地方公務員法
教員は、その職の信用を失墜するような行為をしてはいけません。これは、教員の社会的な信用を守るために必要な規定です。
(3)職務上の義務に違反した場合、または職務を怠った場合
教員は、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、職務に専念する義務があります。
この義務に違反し、勤務時間中に職務以外のことをしたり、上司の命令に従わなかったり、無断欠勤を続けたり、公務員として行うべき仕事を怠った場合等が懲戒処分の対象となります。
職務に専念する義務
第三十五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
地方公務員法
教員は、職務に専念しなければならないとされています。これは、授業や生徒指導などの業務を真剣に行うことを意味します。
法令等及び上司の職務上の命令に従う義務
第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
地方公務員法
教員は、上司の職務上の命令に従わなければなりません。ただし、法令に反する命令には従う義務はありません。
今回の男性教諭の例でいえば、処分の根拠は第三十三条の「信用失墜行為」ではないかと考えられます。
教員の処分の種類は?その処分の違いとは?
地方公務員法では、教員が服務規定に違反した場合に受ける処分の種類についても定められています。以下に、その主要な処分の種類を説明します。
1. 戒告(第29条の2)
戒告は、最も軽い処分の一つであり、口頭や書面で注意を与えるものです。教員に対して「次からは気をつけてください」といった指導が行われます。
2. 減給(第29条の2)
減給は、教員の給与を一時的に減額する処分です。具体的には、1回の減給額は教員の1日分の給与の3分の1を超えてはいけません。また、減給の期間は1年以内とされています。
3. 停職(第29条の2)
停職は、教員を一定期間、職務から外し、その間の給与を支給しない処分です。停職の期間は1年以内と定められています。停職中の教員は職務に従事できず、その間の給与も受け取れません。
4. 降任(第29条の2)
降任は、教員の職務上の地位を引き下げる処分です。例えば、主任教師から一般の教員に降格されることがあります。これは、職務上の責任を軽減するために行われます。
5. 免職(第29条の2)
免職は、教員の職を解く最も重い処分です。教員はその職を失い、再び同じ職に就くことが非常に難しくなります。これは、重大な違反行為に対して行われる最終的な措置です。
処分の判断基準は?
東京都教育委員会では、処分の判断基準として「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」を示しています。
体罰を例にとって、処分の違いを説明すると、
・体罰により児童・生徒を死亡させ、又は児童・生徒に重篤な後遺症を負わせた場合 → 免職
・常習的に体罰を行った場合 → 停職または減給
・体罰を行った場合 → 戒告
となります。
まとめ
教員の処分について、地方公務員法に基づく規定や具体的な処分の種類、処分の意義について詳しく解説しました。
教員が服務規定を守り、公正に行動することは、生徒たちの安心感や教育の質を保つために非常に重要です。地方公務員法に基づく適切な処分が行われることで、教員の行動が規範に沿ったものとなり、学校全体の信頼性が維持されます。
これからも、教員と生徒が協力して素晴らしい学校生活を築いていくことが大切です。
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